派遣で見た格安店の安さの秘密
大学一年の冬。当時飲食店で働いていた僕は足りない給料を補うために派遣を始めた。
欲しいものがあったのだ。ニンテンドースイッチ、ゼルダの伝説、スマブラだ。
この神ゲー二つは絶対にやりたかった。今でもやってるくらいだ。そこで派遣で冬休み返上で一気に稼ごうってわけだった。。
僕は市川にある倉庫に連日電車で向かった。
はっきり言おう。派遣はオススメしない。
僕が行った倉庫はG◯やH◯Mなどの衣服を扱う倉庫だった。そこには安く品物を提供できる秘密が隠されていたのだ。
到着すると派遣会社名、氏名等を紙に書く。そして働いた時間を1日の終わりに書く。それを派遣会社に提出して給料が払われるというアナログなシステムだ。勤務時間になると男女別々に分けられる。男は肉体労働、女性は仕分けだ。寒く、無機質な倉庫を皆無言で歩く。エアコンはなかった。女性の手が赤くなっているのが見えた。倉庫の至る所に巨大なダンボールが置かれていた。重量感があり、たとえ中が空でも運ぶのが大変そうな大きさだった。
僕らは男組は中年男性の後についていき、船から下ろされたコンテナの前に来た。初めてコンテナを間近で見た。思っているよりもはるかに大きかった。ドアは開けられ、中にはぎっしりダンボールが入っていた。
「それじゃあ、この中のダンボール全て外に出してください。」中年男性はそう言うとどこかに行ってしまった。
「嘘だろ。」
「いくつあるんだよ。」
「軽作業って聞いていたのに。」
皆小声で口々に言ったが、運び終えないことには金は手に入らない。仕事に取り掛かる。一つ持ってみたがかなり重い。
服とはいえ、一般的なダンボールよりも大きいものにぎっしり入っているものを運び出すのだ。かなりの肉体労働である。みんな汗をかきながら運び出す。時計を見ると三十分が経過していた。あと20個くらいか?いや、考えるのはやめよう。皆無心で運び出す。
「あの、隣に置いてあるコンテナってなんでしょうか?」1人の男が言った
「え?あれもやるの?嘘でしょ。」
「さすがに違うだろ。鍵がかかってるし。」
「確かに僕らにやらせるのなら最初から開けときますよね。」
きっとそうだ。そうに違いない。あと少しでこのキツい作業は終わる。皆そう信じてようやく運び終えた。
が!なんと!
中年男性「あ、ごめんごめん。隣のやつからも出してね。今から扉開けるから。」
絶句である。あのキツい作業を再びである。これが時給1000円である。
「これなら時給1500円でも割に合わないですよね。」近くの男性が言う。
「これが服の安さの秘密ですね。」僕のこの一言が空気をやや悪くさせてしまった。。
その後コンテナ作業を終えると休む暇もなく移動で、今度はトラックからダンボールを出せとのことだった。これは軽かったから良かったが逆に小さくて量があり、指定の場所まで20メートルほど運ぶ必要があった。。。
ようやく午前の仕事は終わりである。どことなくカイジの気持ちが分かった気がする。
帝愛ほど酷くはないが…。
午後からはひたすら服の検品をした。袋に入っている服を取り出し、針などがないか調べ再度しまう。面倒な作業だったので何枚かすっぽかした。他にも袋の中で畳んであるコートを広げる作業もした。とにかく立ち仕事で時間が経つのが遅く苦痛である。しかも冬なので手がかじかみそうにもなった。ただ一緒に作業をしていた男性と仲良くなりお喋りができたのは楽しかった。
彼はマッサージ師になるのが夢だったが現実は思っていたほど楽しい仕事ではなく、また人間関係にも悩みが出来たので仕事を辞めたのだという。そして専門学校に通いプログラミングを勉強し、ITの仕事に就く予定だと言っていた。二十代後半の人ではあったが、それでもやりたいことのために行動できるというのは尊敬出来る。きっと今は無事就職ができているはずである。
以上が僕の派遣倉庫体験記である。正直オススメはしない。ちなみに派遣では意外なことに大学生が多い。しかも女の子もいっぱいいる。話せるかどうかは別ではあるが休憩中にLINE交換は出来ると思う。
それと定年退職した老人や主婦も多い。ほんとにヒステリックな人でやばそうな人は滅多にいないので安心はできる。。
低賃金で重労働で人を働かせるのだ。だからこそ僕らは服を安く買えるのだ。この事実は忘れないで欲しい。では、また次の記事で会いましょう。